おね〜さんまってぇ〜

  いくら叫んでも聞こえて欲しい相手には届かないようだ

 

  普段はそんな風に置いてかれたこともないんだけどなぁ…
  呟きながら視線をどこに向けても
  鞭使いの海賊船船長の姿はもう見えなかった

  仕方ない・・・
  気を取り直し辺りを見回す
  全く知らぬ場所でもないのでゆっくり歩くことにしたティチエルは
  いつもは素通りする場所に横道を見つけた 

  なんだろう、ここっ! 

  目がキラキラと輝きだした

  先ほど寂しそうにしていたのが嘘のようである
  こうなったティチエルを止めようとする邪魔者は誰も居ない
  好奇心で胸がいっぱいのティチエルが見知らぬ道に入るのはすぐの事だった


  竹がところ狭しと生い茂る場所

  竹が生えていないところがまるで道のようになっている

  キョロキョロと見回すとブリーズミラクルと河童がこっちに向かってきているようだ


  まだ少し距離がある・・・
  お気に入りの水晶の天使を振りかざし、呪文を唱え始めた

  アイシングピアス!!

  人の顔ぐらいの大きさの氷の塊がいくつもティチエルの周りに出来る

  杖を目標の場所に向けるとその氷塊達が自らの意思を持つかのように敵に襲い掛かった

  ドドドドドォォォン

  被弾時に水蒸気のようなものが辺りに立ち込める

  「ふぅっ、びっくりしたぁ」

  煙が晴れたところには、白くて丸いものと河童のくちばしのようなものが転がっていた

  とたとたと近づいて手に取る

  白くてまぁるい、飴にしては少し大きいな・・・というのが最初の感想だった

  白いしハッカ味がするのかな・・・ちょっと舐めてみたら、わかるかもっ

  「・・・」

  何ともいえない

  ハッカでもないし、○○味というわけでもない、かといって甘いとか酸っぱいとかそういうわけでも  ない

  無味無臭だった、がっかりするティチエルは、以前ナルビクの魔法商店に遊びに行ったときに

  メリッサと話したことを思いだした




  魔法使いなら知っておくべきよ、そんな切り出し方だった気がする

  『マナPポット持ってるかい?』

  『はい、持ってますよ〜』

  取り出したのはマナP中、買いだめしておいて、なくなりそうになったらカウルに買いに行く

  『これはマナP中だね、うちではお得意様ににだけ卸してるマナPがあるんだよ』

  言いながらカウンターの下のほうをごそごそを探している

  『これさ、マナP大』

  なるほど、確かに大きい

  マナP中より一回り大きいそれは効果の高さも伺えた

  『ふふ・・・そんなもの欲しそうな顔をするな、これはあげるよ』

  『わぁ、ありがとうですぅ』

  『私も噂にしか聞いたことないんだけどね、ミラクルの亜種が何種類かいるらしいんだけど』

  『その中の1種類が風のキャンディってアイテムをよく落とすらしいの』

  『うんうんっ、その風のキャンディって??』

  『今見せたマナP大、それよりも多くのマナを回復することが出来るらしいのよ』

  『へぇ〜、それはどこにいるんですかっ??』

  『さぁ・・・そこまでは、何しろ又聞きの情報みたいなもんだからねぇ』

  『もし見つけたら、私にもいくつか分けておくれよ』

  『わかりましたっ』




  これが風のキャンディなのかな・・・

  そのまま口に含んでみる

  なるほど、確かにマナがより多く回復していくのを感じる

  「そうだ、メリッサさんに持っていってあげないとっ」

  「ミラ姉さんにも持っていってあげよう」

  不機嫌そうだったし、これで少しでも機嫌直してくれると良いな

  そう呟きながらブリーズミラクルを探す

  あっちこっちに居るのだが一体一体相手にするのも骨が折れる

  頭に電球マーク灯り、煌いたティチエルは長い長い詠唱に入った

  「アイシクルレイン!!」

  アイシングピアスなんか比にならないほどの巨大な氷塊が天から降り注ぐ

  ドォォォン、ズドォォン、ドガァァァン

  辺りは一面氷塊で真っ白になった

  アイシクルレインは呪文を唱える時間が稼げれば、視界に入る敵全てをなぎ倒す究極の魔法だ

  水蒸気の霧が晴れると風のキャンディ、竹筒、河童のくちばしがそこかしこに転がっている

  「♪」

  風のキャンディだけを拾っていく

  全て拾いきろうかと頑張ったけど、これ以上鞄に入りきらないようだ

  まだまだ3分の1ぐらいは残っていそうだ

  「もったいないなぁ・・・」

  そうは思ったが、持てないものはいくら頑張っても持てない

  「また・・・こよっと、こんどはミラ姉さんも連れてきて、ね」

  後ろ髪を引かれながらも、元来た道に戻る

  「またくるからねっ」

  走るティチエルの足取りはとても軽かった