春の嵐

 春。
 冬の寒さが去り、暖かな気候に眠気を誘われる季節。
 冬眠していた動物が起き、動き出す季節。
 ちょっと困ったことがおきる季節…。

 春のマジリタはいつもと少し違う。
 暖かくなったことで人々の行動も活発になり
 露店の数も増える。街全体に活気が戻ってくるのだ。
 
 「いいか、絶対離れるなよ?」
 「わかってるってば、もう!」

 春の露店街を歩くスラカとニモカ。
 このやり取り、もう何度目かしれない。
 ぷくぅっと頬を膨らませる妹に思わず笑いがこみ上げる。
 別にニモカを子ども扱いしているわけではない。
 春という季節は過ごしやすいのと同時に、危険な季節でもあるのだ。

 「って、あれ?ニモカ?」

 言ってる傍からこれ。
 どこがわかっているのだろう。
 スラカはため息をついて、どこへ行ったかもしれない
 妹を探し始めた。

 
 「ねぇ、君」
 「え?」

 スラカとはぐれたニモカ。
 兄とはぐれ、人通りの少ない道に迷い込んでしまった。
 
 「どうしたの?」
 「お兄ちゃんとはぐれちゃって…」
 「あぁ、人が多いからね。よし、僕も一緒に
  探してあげるよ」

 行こうと男が手を差し出されるが、ニモカは逆に後ずさる。

 「どうしたの?」
 「お兄ちゃんが、知らない人について言っちゃだめだって言った」

 相手が少しびっくりした顔をする。それはすぐに笑みの形に変わっていった。
 
 「へぇ、ちゃんとお兄さんの言うこときくなんて偉いなぁ」

 でもね…。それなら君はお兄さんの傍を離れちゃいけなかったんだ。
 男はニモカの腕をつかんだ。

 「やだ、離して!」
 「怖がらなくても大丈夫だよ。面白いとこ連れて行ってあげる」
 
 男の腕から逃れようと必死に暴れるが、力は相手の方が上。
 顔は笑っていても目が笑っていない。

 「いやだっ、スラカくん!」
 「はいはいいい子だから。あんまり騒がないでね」

 男がニモカを連れて行こうとしたその時。

 −チャリ

 男の首筋に冷たいものが当たった。
 
 「あんた、人の妹に何してるわけ?」

 背後から囁かれる低い声。
 男の身体がびくりとこわばった。

 「困るんだよねぇ。うちの妹勝手に連れて行かれちゃ」

 俺の手が出る前に、どこかに行ってくれないかな?
 そのとたん男はニモカを放り出し、悲鳴をあげて走り去っていった。
 放り出されたニモカは、スラカの腕の中。

 「スラカくん…」
 「だから離れるなって言ったろ?ほんとに言うこときかないんだから…」
 「ごめんなさい…」

 ぎゅうっと抱きついてくる妹の頭をあやすように撫でる。

 「帰ろっか」
 「うん」

 2人は手をつないで露店通りの方へ歩いていった。


 
 えぇーっと、春の危険防止キャンペーンの小説とかじゃないです。
 じゃないはずなんだけど…なんなんだこれ(まて)
 『春は変な人の活動期だから気をつけましょう』
 っていう小説だって言ったらキャンペーンになりますか?
 いや、実際それが言いたかったんだけど…。
 しかも、実物ニモカちゃんこんなに可愛くないよ。
 そして男って誰よ…。
 
 突っ込みだしたら終わらないのでこのへんにしときます(屍)