グラタンとチョコレート。


 本日の夕食はグラタン。そして食後にチョコレートアイス。
 アイスはチョコチップ入りで、チョコ好きにはたまらない一品だろう。
 
 「んー」

 しかし、食べた本人は浮かない顔。眉間に皺を寄せ腕を組み、一生懸命
 唸っている。何か気に入らないところでもあったのだろうか。作った方は
 向かいの席で居心地が悪そうに自作のグラタンを頬張っている。
 ホワイトソースは粉っぽくはないし、材料にもちゃんと火が通っている。
 そのうえ、玉ねぎの歯ごたえはそのまま。じゃがいものほくほく感も
 損なわれてはいない。ベーコンだってちゃんと入れているし。
 デザートに至っては、チョコレートをたっぷり使って濃厚な味を調え、そこにチョコチップ。
 これも、彼の好みに合わせてある。以上の点から、彼が気に入らないようなものは出していないはず。
 
 「何か気に入らないところでもあった?」

 一応訊いておこう。じゃないと後がうるさい。

 「うん?おいしかったよ?」

 何言ってるの?とでも言いたそうな顔である。
 うん、そういう性格だってのはわかってる。
 でもね、それを言わせたのは君なんだよ。
 
 「気に入らなかったんじゃなくて、ね」

 後はぼそぼそとしていて聞き取れないが、言いたいことはわかった。
 でも、できればそれは聞きたくなかった。なぜなら、ろくな目に
 あわないから。

 「グラタンとチョコを一緒にしたらどうかなぁって」
 「はぁ?」
  
 長年の付き合い、とゆうかひょんなことから同居することになって
 早数年。彼の考えは突拍子がなくていつも驚かされてきたが
 ここまでのものはなかったのでないか?というより、どうやって
 グラタンとチョコレートを一緒にするというのだろう。甘いものと
 そうでないもの。とてもではないが、仲良くということにはならないだろう。
 要するに、相性は合わない、と。

 「でも、それ風なお菓子ならなんとかなるんじゃない?」
 
 グラタン風なチョコを使ったお菓子。

 「ふむ…」

 それならできなくもないかもしれない。成功すれば、店に出すメニューが
 また一つ増えるし…。

 「やってみるか」

 夕食もそこそこに、ぶつぶつと一人の世界に入り込んでしまったコックをよそに
 彼はデザートをおいしそうに食べている。近いうちに彼の店に出すメニューが
 増えることだろう。彼は自分の出したアイディアをいつも見事に再現してくれる
 のだから。



 登場人物の名前こそ出てきてませんが、今考え中の長編小説の一つです。
 どんな話か?今のところ、ファンタジーとも何とも関係ないほのぼの喫茶店
 話ってところですが、ほんとにそうなると某カフェのお話と被ってしまうので
 それはいけないいけない…。もう一、二捻り欲しいですね。