天使の羽根が降ってくる  
 
 
 最初に見た時は、驚いた。


 雪。
 冬になると降り、そして場所によっては積もるもの。
 白く、穢れのない。穢れを知らないもの。まるで、あの頃の
 自分のように…。


 
 ざくざくと音が響く。静まり返った森の中に、2人分の足音と跡。
 その一つは小さく、もう一つはそれなりの大きさ。
 まるで大人と子供だが、当の2人は列記とした兄弟。
 しかも、小さな足の跡の持ち主が兄と言うのだから、聞いた者は
 みな驚くこと間違いなしだろう。

 「もうちょっとだね」
 
 小さな足の持ち主が言う。

 「もう少しだな」

 それなりの足の持ち主…弟の方もそれに答え、それっきり2人は一言も
 話さない。ただ、雪の積もった森の道を進んでいくだけである。

 「あ、あれだ!」
 
 兄が声を上げる。指された手の先には、小高い丘。
 白く染まったそれを上る。頂上まで上ると、クロス型の木が
 2本立っていた。それらにも雪が積もっていて、手袋をつけた手で
 雪を掃ってやる。

 「や、きたよ。2人とも」

 兄のほうが声をかけた。金の髪が、鈍く光っている。
 
 「全く、こんな所まで足を運ばせるとは、呆れた部下だな」

 対するこちらは銀の髪。長い髪を高い位置で一つにまとめ
 青いリボンで結っている。

 「今日はね、お前たちにプレゼントを持ってきたんだ」

 そう言って手の中の物を木の前にかざす。

 「スノードロップって言うんだって」

 今は冬。春や夏のような色のある花は育たない。
 しかしこれなら、と。夏の間から2人で育てた物である。
 綺麗に包んだそれを、木の前に置く。

 「ほら、プラチナも」

  プラチナと呼ばれた弟も、兄にならってそれを置こうとし
 その手を止めた。

 「プラチナ?」

 いつまでたっても花を置かない弟に、声をかける。
 それに顔を向け微かに笑うと、スノードロップの花びらのみを
 墓石代わりの木の上から舞わせる。兄が呆けた顔をしていた。

 「偶には、いいだろう」

 きっとあいつらも同じ顔をしているんじゃないか。
 
 「そうだね」

 そう言うと、兄…アレクも一度置いた花を手に取ると。
 白い花びらを木の上へ降らせる。

 「昔」
 「ん?」
 「昔、あいつが言ってたことがあるんだ」
 
 空から降る雪を、羽根と間違えたことがあるって。
 花びらをちぎっては降らせちぎっては降らせしながら
 アレクは言った。
 

 「あぁ、言われれば見えなくも…ないな」
 「ね」

 空から降る雪を羽根と見間違えたのはおそらく
 あの2人が自分たちの故郷に帰りたいと思っていたから。
 そして利用され、自分たちを裏切った。今となっては
 それも叶わなくなってしまったけれど、ここからなら
 空がよく見えるから。それで、勘弁して?

 

 
 他のジャンルで書こうとしたんですけどね。
 羽根=雪 というのが思い浮かんだ瞬間、これですよ。
 ちなみに、今現在ゲームを進行中ですが、兄上は死んでしまい
 ました(屍)ジェイドも、多分死ぬだろうな、この分だと…。
 サフィの参謀EDは出しました。問題はジェイドです。
 こいつ、手ごわいんですよ。ほんと。少し素直になれば
 いいのにねー(ぇえ)でも、可哀相な人です、この人。
 人間追い詰められると、こういう考え方しかできなくなるのか。
 あ、でもそれならカロールも同じかな。それから、サフィも。