最終章 「バードコア…」 スラカは身体を引きずって小さな相棒のところまでいこうとする。 身体の下で、ずりずりと音がした。服が砂に汚れていく。 でも、そんなことは関係なかった。あいつのところにいってあげなきゃ。 自分がいってもどうにかなるわけではない、むしろ恨まれているだろうけど。 これは、マスターとしての自分の役目だから。 「バードコア」 もう一度呼ぶと、やっと振り返った。 バードコアはスラカの方へゆっくりと近づいてくると 主人の身体の下に自分の身体を滑りこませ、門の方へと 引きずってゆく。 「ごめんな…」 身体の下の小さな相棒に向かって、謝罪の言葉を述べる。 とたん、バードコアから光があふれはじめた。 そしてスラカの身体が軽くなる。だるさが消えた。 立ち上がりバードコアを見下ろすと、小さな相棒はスラカのほうを見ていた。 まるで気にするなとでも言うように。鳥種族の力は、傷ついたものを癒す。 バードコアは小さいながらも、立派な癒しの力を持っていた。 「ありがとう、…翼」 バードコアを抱き上げ、お礼と共に名前を呼んだ。 一般的に呼ばれている名前ではなく、スラカ自身がつけた名前。 彼だけの名前を。 「…」 いきなり呼ばれた名前にとまどっていた翼だが、嬉しそうに スラカの腕の中で跳ねて見せた。 翼と書いて"よく"と読む。 小さな羽根を持った鳥が、いつの日か羽ばたけるように。 そして自分も、これからの未来に向かって羽ばたけるように。 彼の旅は、まだ始まったばかりなのだから。 fin...