雨が降る。
 はじめはぽつりぽつりゆっくりと。
 そのうちざぁっと振ってくる。
 
 2000Hitフリー小説
  みずたまり


 ―トレセド

 キルカは、マスターの帰りを待っていた。
 彼のマスターは友人に連れられ、街のどこかへ行ってしまった。
  キルカはハイトーラ。普通のトーラではない、その証拠に彼の足元には
 輝く魔方陣がある。キルカが歩けば、魔方陣も共に移動する。
 「がうぅ…」
 彼のマスターが彼を置いていって随分と時間がたっている。
 すぐもどってくるから、と言ったのに…。
 キルカはあごを地につけ、身体を地面にあずけた。
 耳が、ぺたりと伏せられる。
 一体何処へ行ってしまったのだろう。街の中だけなら
 行って戻ってくるのにそんなに時間はかからないはずだし
 キルカを置いたままでは外へ行くこともできない。
 退屈そうに動かされていた目が、一つものをとらえた。
 そこにあったのは、一つのみずたまり。
  雨上がり、大地のくぼみにたまった水が作る小さな湖。
 キルカは立ち上がると、そろそろと傍に行って見る。
 覗き込むと、自分の顔が映った。バックには青い空。
 恐る恐る片足を入れてみる。足を入れたところから
 湖全体に波紋が広がった。足を引き、今度は勢いよく
 飛び込んでみる。

 ぱしゃん

 水が、外へあふれた。底が見えるほど透明だったものは
 茶色く濁り、水の中でもうもうと土煙があがる。
 それでもかまわず、キルカはみずたまりで遊びはじめた。
 泥交じりの水がはね、キルカの白い毛並みに黒い点がつく。
 それを気にすることもなく、キルカはただ遊び続けていた。


 
 太陽が地平線へ沈む時、空は青から赤へと着替えをする。
  それは、1日に終わりをつげる色。地上へ生きるすべての者へ
 明日も元気ですごせるようにと願いを込めて。
 「くぅ…」
 みずたまりに飽きたキルカは、泥だらけの身体を地に伏せて
 主人の帰りを待っていた。
 「くぅー…」
 その鳴き声は弱弱しい。人で言うなら、べそをかきはじめた子供
 というところだろう。
 「くぃー…」
 鳴いて鳴いて鳴き疲れたころ、それは聞こえた。
 「キルカー」
 ぴくり、キルカの耳が動く。伏せていた身体が起き上がる。
 「キルカー」
 もう一度聞こえた。その瞬間、彼は声が聞こえた方へ
 走っていた。その先には、彼が誰よりも大好きな
 彼の待ち人がいる。
 
 後に残ったのは、彼が遊んだみずたまり。
 あれだけ濁っていた水はすっかり元に戻り
 澄んだ水には夜空に輝く星が映っていた。

                  fin...

  …あとがき…
 と言っても言い分けみたいなもんですが。
 本当は、もっと短くなる予定でしたってか
 短くまとめる予定でした。
 それが、書いているうちにこんなに長く…。
 どういうこっちゃですが、私の文章力がないだけです。
 ぅー、もっと精進せねば!内容は、ハイトラ物語のその後みたいなもんです。
 キルカのある1日、みたいな?本編で1度だけ鳴いたキルカ君。
 鳴き声がいい、と言われましたので…今回は出血大サービスです(笑)
 しかし、トラってどういう風に鳴くんだろう…(まて)

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 それでは、これからも夕焼け空をよろしくおねがいします。