お昼には少し早いこの時間、二人はナルビクを出てすぐのクライデン平原に居た 「次っ!」 「まだまだぁっ!」 シベリンの叫びともとれるはっきりとした声が背中から聞こえる ズバッ、ズバッ、ズバッ テンポの良い斬撃とシベリンの声が心地よい 最後にドォォォンとひときわ大きな音が響いた。紅龍登天が決まったようだ 負けていられるか、とこちらも目の前のゼリッピをクナイで一突きにする 後ろを振り向くと黄色いゼリー状の残骸がそこかしこに散らばっている とても先ほどまで愛嬌を振りまいていたモンスターがいた場所とは思えない、むしろ凄惨ささえ漂 う光景だった S&Aでゼリッピ退治を請け負ったのはつい先ほど ゼリッピがナルビク周辺で大量発生して住民が困っているということだった 緊急の依頼で報酬もはずむということだったので一も二もなく受けたまでは良かったのだが・・・ その数が半端じゃない 100や200ではないのだ もう何百匹も倒している 二人合わせて300匹ぐらい倒した辺りからカウントするという作業を止めた 「次から次から・・・なんでこうも沸いてくるんだ!」 シベリンの心からの叫び声が聞こえる 口には出さないが私も同感だった いくら弱いモンスターといえどもその数が半端じゃない、流石のシベリンにも疲れの色が見えてい た 私は最小限の動きで敵を仕留める術を知っているが、シベリンの動きには無駄が多い 倒している数も多いが疲労がたまるのも早いのは当然だろう 「ナヤぁ〜、スタミナポットもってないかぁ〜?」 「ん・・・私はあんまり持てないから少ししかない」 そう言いながらスタミナポットを声のするほうに投げた 「サンキュー!、助かったぜ!」 ドォォォン!! 間もなく紅龍登天の大きな音が響いた 1時間が2時間、2時間が3時間と、徐々に過ぎゆく時間の中 そろそろ1000匹ぐらい倒したんじゃないかと思い始めた頃に 漸く周りに敵が居なくなった事を確認した 「ぬぁぁ〜、もうこんな依頼はやらねぇ〜〜」 喉の奥から声を絞り出したシベリンが愛槍のスコルピオハートを地面に突き刺すと 丁度よさそうな草むらを見つけて大の字になって寝ころんだ 時間はそろそろ3時だろうか、おやつの時間には丁度いい こんなこともあろうかと用意していたクッキーを取り出す 座り込んでぽりぽり食べていると横からねだる声が聞こえた 「ん・・・ナヤ、うまそーなもん食べてるな〜俺にもくれぇ〜」 「ちょっとだけ・・・」 寝そべって気持ちよさそうにしているシベリンの口に放り込んだ そのままの体勢で美味しそうに食べていたら 「ちょっと昼寝してからS&Aに戻ればいいか〜」 と、言ったそばから寝ていた くか〜・・・くか〜・・・ なんとも気持ちよさそうな寝息である なんと早い・・・と思いながらも 大の字になって寝ているシベリンの腕を枕にして私も寝ることにした 陽も傾き始め、風が少し冷たくなってきた頃 少し長く眠っていたらしい私は、寒気を感じてシベリン枕から顔を起した 「おお・・・やっと起きてくれたか、まったく、俺に腕枕をさせるなんてな」 「実は俺のことが好きなんじゃないのか〜?」 ずっと枕にされていた腕を動かしながら楽しそうに喋っている 「好き・・・って何?わからない・・・」 「そうか〜、残念だな・・・まぁ、そろそろ戻ってS&Aに報告しに行くか!」 突き刺していたスコルピオハートを抜くともう歩き始めていた 「ほら〜、ナヤおいてくぞ〜」 「ま、まって・・・」 慌てて起き上がるとシベリンの元へ駈け出した 好きという感情はよく分からない ただシベリンと一緒に居たい、居て欲しいと思う でも、そんな言葉を口に出してはいけない 私は守護者、それ以上でもそれ以下でもない だから、まだもう少しこの感情を抑えることにした トラちゃんが書いてくれた小説。ご本人の許可が下りたので(無理やりおろしたなんていわない) 掲載(*´▽`) さぁみんな、存分にみるといいよっ!