梅雨 「梅雨っていやだねー」 窓に手を当て、空を見上げながらニモカが言う。 ここは、ルデース奥にある一軒家。スラカが借りている家である。 そうだねー、と台所から出てきたのは宗秦。手にはティーポットと 暖めたカップ、それからクッキーののった盆。どうやら3時のティータイムのようである。 「でも、これがないと、夏水不足になっちゃうからね」 ガチャガチャと音を立てながらお茶をいれていくさまは、スラカに比べれば危なっかしいが 春夜に比べると、安心してみることができるものである。カップを持ってニモカに近づくと ニモカも気づいたのか宗秦のほうをむいた。 「これは植物のため?」 首をかしげながら訊いてくる。宗秦はううんとうなった。 どうなんだろう。水といえば植物だが、人間も水を飲むし、かと言って梅雨は人間のために あるものではないし。 「植物だけのためじゃないと思うよ?」 語尾に?がつくのは、自分でも自信がないから。じゃあ…。 「誰のため?」 と、またもやニモカが訊いてくる。 誰のため…誰のためなんだろう…。水が必要なのは、植物も動物もみんなだし。 だったら…。 「生き物のため?」 ?がつくのはやっぱり自信がないからで。 ニモカを見ると、なるほどね、とか言いながらうんうんうなっている。 ニモカはなんだか納得してるしそれでいいのかな?と思いながら自分もクッキーをかじり初めた。 「ニモカ、クッキー食べる?」 スラカのお手製。問いかけると、いる!と元気な返事が返ってきた。即答である。 スラカのクッキーはやっぱり人気だなぁと思いながら、目の前でクッキーをはぐはぐしている 頭を軽くぽんぽんとたたいた。 結局悩みはどうなったのだろうか。 ニモカは、小さなことに疑問を持ちます。見た目が幼いと、幼く感じるよね!