「スラカ」
 「ん〜?」

 宗秦がスラカの名を呼ぶ。スラカは生返事でテキパキと手を動かしている。

 「今日、バレンタインだよな」
 「そうだよ」

 返事は変わらず、テキパキと手を動かすスラカ。

 「なんで俺たちがチョコ作ってんの…?」

 そう、スラカと宗秦が立っているのは他でもないキッチンだった。


 ☆ハッピーバレンタイン作戦☆


 「なんでって、うちの姫二人が作って作ってうるさいからでしょ」

 姫二人、とは、ニモカと春夜のことである。

 「いや、バレンタインってさ、男がチョコもらう日じゃん?なんで俺らが
 作ってんの?」
 「まぁ、外国じゃ関係ないっていうし、たまにはいいでしょ」

 ニコニコと笑いながらカツカツとメレンゲをあわ立てるスラカ。電動泡だて器はないので
 すべて手作業である。対する宗秦は、生地の方に、粉物を入れは混ぜ、入れは混ぜを繰り返している。
 一度に入れるとダマになりやすいのだ。

 「よし。このくらいでいいかなっと」

 八分立てにしたメレンゲを少しずつ生地に混ぜていく。いれるのはスラカ
 ゴムベラで混ぜているのは宗秦である。

 「型にながすよ」
 「おう」

 作った生地を型に流しいれ、後はオーブンで焼けば完成である。

 「上手く膨らんでくれるかなっと」
 「メレンゲ丁度いい感じだったからなぁ。大丈夫だとは思うけど」

 これで、メレンゲがゆるいとうまく膨らまない。薄っぺらいものになってしまう。
 二人が作っているのはガトーショコラ。できあがるころには、部屋にはチョコレートの
 匂いにみちていることだろう。

 

 「ニモカと春夜、喜ぶだろうなー」
 「だから、こんな状態でいいのかよ…」

 それはまぁ置いておいて。