行く年来る年

 
 「お、紅白やってる」
 「スラカ、そばできた?」
 「まだ早いでしょ」

 ルデースの奥地にある一軒家。いつかスラカが
 美月姫とくぉりてぃに冷やし中華をご馳走したあの家。
 今宵その家は年越しパーティーの会場に使われていた。
 
 「今日、何人来るんだっけ?」
 「えっと、あたしが呼んだのとあんたと宗が呼んだのは
  被ってるだろうし…あとはニモカ?」
 「ニモカ、誰呼んだか知らんの?」
 
 春夜と宗秦に問われるが、訊かれた本人は腕を組んで首をひねった。
 
 「聞いてないの?」
 「人数だけは言ってきたけど、名前までは聞いてなかったな」
 「おいおい…」

 聞いとけよ、お前兄だろ?

 「無理に訊くこともないだろう?」
  
 苦笑する兄の姿にため息をつく約1名。
 て、1名…?

 「なぁに言ってんのよ!」

 もう1名は、気合の一拍とともに椅子の上から
 立ち上がった。手に握りこぶしを握って。

 「ニモカが連れてきたのが男だったらどうすんのよ!
  あたしは絶対認めないからね。どこの馬の骨ともしれない野郎に
  あの子を渡してたまるもんですか!!」
 「どこの馬の骨ともしれないって…」

 というか、それはまるで母親のセリフ。

 「俺、こんな若い母さん持った覚えないんだけどなぁ」
 「スラカ、それは違うと思うぞ」

 言うのはそこなのか。何かずれている兄の発言に思わず
 突込みが入る。こいつはこんなにボケていたか?
 
 「まぁ、もうちょいしたら来るだろうし
  俺も知ってる人だとは言ってたから。」

 大丈夫でしょ。スラカはそういい残すと、キッチンへ戻っていった。
 麺はあとで茹でるにしても、スープだけは先に作っておかなければ
 ならない。具はもう切ってあるから、あとはダシの入った鍋と一緒に
 火を通すだけである。

 「スーラーカーたーん」

 表から声が聞こえた。

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