夕立


 「あーあ、びしょぬれー」
 「いきなり降ってきたな…」

 屋根の下へ駆け込んできたアレクとプラチナ。
 ついさっきまで晴れていた空は真っ黒な雲に覆われ
 今ではざあざあと雨まで降っている。遠くの方で
 雲がチカチカと光っているあれは、おそらく雷だろう。
 天気がいいからと中庭で日向ぼっこをしていた2人は
 案の定この雨に降られてしまったのだ。

 「あらら、見事に濡れちゃいましたねぇ…」

 城の中から、苦笑顔のサフィルスがタオル片手にやってくる。
 
 「もー、折角気持ちよく寝てたのに。いきなり降ってくるなんて
  反則だよ!」

 帽子を脱ぎ、サフィルスから受け取ったタオルでがしがしと頭を拭く。
 プラチナの方も髪を下ろしてのろのろと髪を拭いている。
 どうやら、まだ眠気が抜けていないらしい。

 「プラチナ様…お拭きしましょうか?」

 タオル片手に舟をこぎ始めたプラチナを見て、見ていられなくなった
 サフィルスにこくりと頷き、案内されたイスに腰を下ろす。
 イスは濡れてしまったが、後で乾かせばいいだろう。
 しかし、プラチナの髪を拭くサフィルスをみてアレクがわめき始めた。
 タオルを頭からかぶり、サフィルスの腰の辺りに抱きつく。
 濡れた服のままで。

 「わわ、アレク様。濡れちゃいますよ〜」

 抱きつかれた方はたまったものではない。
 これが終わったらやってあげますから。
 腰に回された腕を軽くぽんぽんと叩いてはずさせる。
 
「むーっ」

 ぶーっと膨れるアレク。その頭に、ぽふりと誰かの手が乗せられた。
 あれ?っと思って上を見ると、そこにあったのはジェイドの顔。

 「なーに、膨れてんですか?」

 早く拭かないと風邪引くでしょう。
 わしわしと傷つけないように髪から水気を拭き取っていく。
 一方、アレクは呆け顔。ジェイドがこんなことしてくれるなんて…。
 それこそ、風邪でも引いたんじゃないか?

 「残念ながら、俺は雨に濡れていませんので」

 それに、大人は風邪をひきにくいんですよ。子供と違ってね。