物悲しい時間

 夏っていうのは元気なイメージ。植物もよく育つ。
 夏が終わると、生き物がなんだか萎れてくる。
 動物も、冬に備え始める。でも、森の中は食べ物でいっぱいになる。
 でも、でもね。

 秋って、なんだか悲しくなるときがありませんか?

 「ないわね」
 「ないなぁ」

 森の中を歩いていて思ったから、訊いてみたらあっさりそういわれた。
 そんなはっきり言わなくてもいいのに…。

 「でも、みんな枯れてっちゃうんだよ?」

 それって悲しいことじゃないの?

 「そりゃぁ、寒くなったら木も枯れるわよ」
 「ニモカはエルフだから、そういうのに敏感なんじゃないかな」

 人間でも敏感な人はいるけれど、この2人はそうじゃないのかな?
 思ってもそこまで思わないのかな?



 「…人間ってよくわからない」
 
  膨れた顔でそう言ったら、大きな手が頭を撫でてくれた。
  クスクスと苦笑した風の笑い声が頭上から聞こえてくる。
 見上げると、そこには私の兄がいた。

 「ねぇ、スラくん」

 名前を呼ぶと、ん?と首を傾げてくれる。
 人間とエルフが混ざった兄。この人は、どう思っているのだろうか。

 「秋って、悲しくなる時がない?」

 植物が枯れいくのは悲しくない?
 そう言うと、スラくんの苦笑いが濃くなった。

 「木が枯れるのは、なんだか悲しい感じがするけど」

 あぁ、やっぱりそうなんだ。

 「でもね、ニモカ」


 木が枯れるのは、次に春が来た時に綺麗な花を咲かせるためなんだよ?


 「だから、悲しいだけじゃないんだよ?」

 相変わらず手は私の頭を撫でている。そして、まるで小さい子にでも
 言い聞かせるような口調はとても優しくて。

 「うん、わかった」

 自然と、口がそう言っていた。

  「ニモカは、秋が嫌い?」

 そう訊かれた時も自然と首を横に振っていた。
 私は別に、秋が嫌いなわけじゃない。ただ、少し寂しい感じがするだけ。
 1人でいると、悲しくなるだけ。冬になって、森に雪が積もると
 クリスマスがやってくる。でも、それがくるまでの森がなんだか
 寂しく見えたから、なんだか悲しくなったけど、でもそれは
 春になるまでに少し休憩するだけだったんだね。


 
 ・・・あとがき・・・
 書いてる間に何が言いたいかわからなくなったので
 完結という名の打ち切り(まてや)めずらしく一人称です。
 ニモカの気持ちです。私が思ったことをエルフである
 ニモちゃんに代弁していただきました。エルフだもんね。
 やっぱり、森の様子とかになると敏感なんだろうなぁ
 と思いつつ。

                    2006・3・21