ートレセド 倉庫前 ボクが目を覚ますと、マスターはボクをトレセドという街へ 連れて行ってくれた。トレセドは、ルデースとは違い、砂ばかりで 緑と言えるものは、ところどころに生えているサボテンだけ。 中央の湖付近には木があったけど、それもどこか乾燥して見えた。 マスターがここにきたのは、ここにはよく友達が集まるかららしい。 実際に、ボクを作るために必要だった『獣の牙』もここでお友達から もらったそうだ。 「お?姫たん、デモンたん」 「あ、スラカたん。ちゃお」 「はろ〜」 「2人ともやほ〜」 倉庫前に人が2人。弓を持った人と、大きな剣を持った人。 「あれ?その子どうしたの?」 弓を持った人がボクを見て不思議そうな顔をした。 この人の名前は美月姫。中華飯店ってギルドのマスターをやってる人。 「さっきできたばっかなんだ。今名前考えてるんだけど、中々いいのが うかばなくて…」 「ふむ。んー、最後に『カ』を入れたいなぁ」 「カ?」 「『スラカ』の『カ』」 おそろいっぽいでしょ?とマスターとボクの方を見ながら いたずらっぽい笑みをうかべる姫さん。おそろい、と聞いて ボクはちょっと嬉しくなった。どんな名前になるんだろう。 「最後に『カ』かぁ…」 悩んでいるマスターと姫さん。 ボクは傍でじっとしてたんだけど、頭の上に何かのせられた感じがして 上を向く。そこには、姫さんと一緒にいた大きな剣を持った人がいた。 横には、金色の鳥を連れている。頭の上に乗せられたのは、この人の 手だったみたいだ。 「スラカ氏も姫さんも時間がかかりそうだから、こっちで遊んでよっか」 うちの子たちと遊んでやって。その言葉を聞いて、ボクの周りに金色の鳥が 集まってきた。この鳥はミズク。そして、ミズクを連れているこの人の名前は デーモン。鳥がすっごく好きな人。ミズクはお気に入りらしくて、いつも3匹連れて 歩き回ってるとか。 「この子がモンブラン、その隣がプリン、1番端っこがオムレットだよ」 ボクの隣にかがんでミズクの紹介をしてくれるデーモンさん。 ボクはなんとなく分かるけど他の人はわかるのかなぁ。これ。 そんなことを思っていると、目の前に残っているのはプリンだけ。 後の2匹はどこに…?きょろきょろと周りを見回していると、何故か ボクの両斜め後ろに2匹。見事に囲まれました…。 「デモンたん、一体なにやって…」 後ろを振り返ると、マスターが姫さんと一緒に苦笑いしながら こっちを見ていた。 「囲んでみた」 デーモンさん、親指立ててハイポーズ。すっぱりと言い切ってくれました。 その言葉に、から笑いするマスター。一方姫さんは、悶々だからと1人で 納得していた。 「あ、そのこの名前決まったよ」 「俺じゃなくて、姫たんが考えてくれたんだけどね」 「何になったの?」 「キルカ」 「俺が出した『キカ』ってのに、姫たんが『ル』を付け加えて 『キルカ』に決定したの」 「いい名前だね〜」 「キルカ、どうかな?」 マスターがボクとミズクの囲いの中に入り、ボクの傍で膝をつく。 毛並みをなでながら首をかしげた。 「…がぅ」 気に入らないわけがない。ボクはマスターの足元に擦り寄る。 ありがとう、と意をこめて。 「気に入ってくれたみたいだね」 「うん。ありがとう、姫たん」 「どういたしまして」 こうして、ボクに名前がつきました。 ボクの名前はキルカ。ハイトーラのキルカです。 back next