8Fにつくと、マスターはボクの他にスノウを2匹出した。
 スノウの名前は莉雪と雪ん子。片方は、譲ってもらったものだのだという。
 「よし、行くか」
  そういうと、マスターは先陣をきって走り出す。
 ロゼッタの敵は、人を見ると襲ってくる。
 シェルで防御をしながら、周りの敵に切りつけていくマスター。
 ボクたちはマスターの後に敵に攻撃をする。周りの敵が
 次々と倒れていった。ボクの攻撃はよく当たり、
 確実に相手の体力を削っていく。狩りはスムーズに進んでいくかに
 思えた。しかし…
 「キルカ!」
 マスターに名前を呼ばれ顔を上げると、目の前に敵のブレスが迫っていた。
 避けようとしたが避けきれず、ブレスの衝撃で吹き飛ばされ壁に身体を打ち付けた。
 「キルカ、大丈夫か!?」
 マスターが駆け寄り、ボクの名前を叫んでいる。
 身体は声を出すことができないくらい傷ついていたようだ。
 返事をしたいのに、あなたの声に応えたいのに、それができない。
 「キルカ…?キルカ!!」
 最後に聞いたのは、ボクを呼ぶあなたの声だった。
 
 スラカは歯をかみ締める。キルカの攻撃はよく当たる。
 ということは、逆に相手の攻撃は避けられないかもしれない。
 ならば、相手の注意を引き寄せておくのは自分の役目ではなかったのか。
 自分は防御ができる。シェルをはれば、一定時間は攻撃されてもダメージはうけない。
 しかし、キルカは違う。自分のせいで、大事なメイトを傷つけてしまった。
 「くっそ…」
 奥歯が、ぎりっと嫌な音をたてた。
 早くキルカをトレーナーの所に連れて行かなければ。
 スラカは片手を上げ、それをそのまま地面につく。
 石畳の床に、たんっ、と小さな音がした。
 スラッシャーの足元から巨大な檻が出現した。
 檻はスラッシャーをからめとり、動きを封じる。
 「はぁっ…!!」
 気合で、スラッシャーを一刀。巨体が床に倒れた。
 「莉雪、雪ん子!」
 名前を呼ばれた2匹は、出口へ走るスラカの後を追いかける。
 「カレンスさん!」
 「おや、スラカ君」
 「お願いします。トレセドに戻してください!」
 「ん、別に構わないけどまだきたばかりなんじゃないかい?」
 「そうなんですけど…でもこいつがやられちゃったんです。
  早く治療してあげないと…」
 「わかった、早く回復してあげなさい」
 そう言って、カレンスはスラカの額を指先でとんっとついた。
 スラカとメイトたちの姿が消える。カレンスがトレセドへ送ったのだ。
 残ったのは、スラカを追ってきた敵。一同は、カレンスをじっと見つめている。
 視線に気づいたカレンスは、にっこりと笑みを向けた。
 「君達、まさか俺に攻撃しようなんて思ってないよな?」
 口調はおだやか、顔には満面の笑みを浮かべてはいるが怖いのは何故だろう…。
 敵一同は視線を外すと、わさわさとその場を離れていった。
 カレンスがモンスターに攻撃されない理由。それは、昔カレンスがロゼッタ8Fに
 降り立った際、攻撃してきたモンスターを殲滅したという記録を持っているからである。
 
 8Fの奥にいる人物は最強。
 モンスターたちは、それを誰よりもよく知っているのである。


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