「デモン、ミズク連れてきたのか」
 「うん、連れてきたよ〜」
 「そうかそうか…」
 「くぉちゃん、なんかたくらんでない…?」
 「にや」

 −ピンポーン

 表情を引きつらせるスラカ。そのとき、玄関のチャイムが鳴った。 

 「あら?他にも誰か呼んでたの?」
 「まるちゃんじゃないかな。ソバ麺持ってきてくれたんだと」
 「ほー、まるは麺担当か」

 ガチャリというドアの開く音とともに片手に包みを持った
 まるまるが入ってきた。

 「こんばんわー。集まってるね」
 「まるちゃん、ちゃお〜」
 「いらっしゃーい」
 「あ、醒たんお久しぶり」
 「お久しぶりです…っていてっ!」

 妙に堅苦しく挨拶をする醒に、背後からの一発。
 
 「なぁに改まってんのよ。今更でしょ」

 犯人は春夜だった。痛みを堪え、背中をさする。

 「あのなー、お前は俺に何か恨みでもあるわけ?」
 「べっつに?」
 「あのね、春夜は多分醒のこと心配してたんだよ」

 いきなり姿が見えなくなったって言ってたから。
 
 「今日醒がきてくれて、安心してるんじゃない?」
 「安心はしてるけどね。音信普通になったバカなギルメンと
  連絡がついて」
 「あはは…」
 「あーあ、たまには本音言っても罰は当たらないだろうに…」

 最も、それが春夜なのだが。

 「大丈夫、もう慣れたよ…」

 気は強いが、自分の気持ちを上手く出せない不器用な人間。
 それが、春夜という人物だということを宗秦ももちろん知っている。
 ただ、もう少し素直になってほしいと思っているだけで。
 
 「それでまるちゃん、麺の方は?」
 「あ、これね」

 ありがとう。例を言って再びキッチンにもぐろうとするスラカ。
 
 「あ、スラカたん」
 「ん?」
 
 その背に声がかけられ振り向くと、表情を曇らせた美月姫がいた。
 
 「ニモカたんは?」
 「さぁ?」
 「さぁって…」

 自分の妹の事なのに…。言い募ろうとする美月姫。
 そこに、机について他のメンバーと話していたまるまるが顔を上げた。

 「そういえば、ニモカたんルデにはきてたみたいよ」
 「え?」
 「どこにいた?」

 まるまるは、んーと唸るように自分の記憶をたどる。

 「私が見た時は、ワープ前だったかな」
 「見てくる!」
 「て、姫たん!?」
 
 止めるまもなく、美月姫は家を飛び出した。
 バタバタと音を立てて出て行く彼女を見て、スラカは軽く息をはくはいた。

 「姫、相変わらずだね」
 「だね。ニモカのことになるといつもこれだもの」
 
 大丈夫だと思うんだけどねぇ。一応あいつも成長してんだし。

 「それでもほっとけないんでしょ」
 「うーん…」
 
 愛されてるねぇ、うちの妹。
 苦笑ともなんとも言いがたい表情でぼやくスラカを見て
 まるまるはくすくすと笑った。

 「嬉しいんでしょ、お兄ちゃん」
 「まぁね」
 
  
 年があけるまであと2時間。
 
 
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