「あ、なんか向こう明るいよ」

 道を外れて木々の中。明かりを発見したニモカは
 嬉しそうな声を上げた。ペックもほっとした面持ちで
 歩みを進める。やがて見えてきた一軒家。明かりがともり
 楽しそうな声も聞こえてきた。

 「到着ー!」

 扉の前、2人で息をつく。遅くなったが、皆は心配していない
 だろうか。ノブに手をのせて、ドアを開ける。
 
 「おわ!」

 驚いたような声とともに2人の前に飛び出したのは。

 「あれ?スラ君」
 「おう、おかえり。あー、びっくりした」
 「なんで…」
 「いや、外からなんか聞こえたようなきがしてな
  開けようとしたら先にお前が開けちゃったわけ」

 体勢を立て直し、中へ入れと手で示す。
 ニモカが家の中に入ると、明かりに照らされ
 背後の人物の姿があきらかになった。

 「あ、えっと。…こんばんは」
 「いらっしゃい、ぺくたん。ごめんな?
  うちの妹が迷惑かけて」
 「あ、いえ。そんなことないです」

 ペックは慌てたように首を横に振る。
 自分は大したことはしていない。ニモカに招待されて
 一緒にここまできただけなのだから。

 「スラ君、あのねあのね」
 「ん?どした?」
 「ぺくたんね、ここまで手繋いできてくれたの」
 「へえ」

 それはそれは…。スラカは中に入ることが出来ず
 おたおたとしているペックに向きなおる。

 「ありがとう、ぺくたん」

 妹をここまで連れてきてくれて。

 「ぺくたんがいなかったら、あいつここまで
  これてなかったよ」

 俺の保障つきね。ウインクつきでそう言われては
 言い返す言葉もない。そのまま家の中へ招かれ
 スラカと一緒に部屋に入ると、そこは大宴会場と化していた。
 
 「なんだこれ…」
 「皆さん酔ってますね…」

 もちろん全員が酔っているわけではない。
 年齢がバラバラなメンバーの中には未成年も混じっている。
 
 「でもよ…」
 
 酔いつぶれている人たちの中に混じって眠っている
 友人の下へ向かい、反応のない友を静かに見下ろした。

 「お前は未成年と違うのか?なぁ、宗秦」

 起きている面々がビクリと肩を震わせた。
 まとっている空気が冷気を帯びているのは気のせいだろうか。
 冷気をまとったままにっこりと笑うが、口は笑っていても
 目が笑っていない。
 
 「とっとと起きて手伝え、この飲んだくれ未成年!」

 森の中の一軒家にスラカの怒号が響いた。

  
  年が明けるまで、あと30分。
 
 

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