キッチンに男2人。年越しソバを茹でている。
 
 「あー、頭いて…」

 酒で酔って寝ているところをスラカにたたき起こされ
 手伝いとして一緒にキッチンに立っている宗秦は
 酒で痛む頭を抑え、しきりに痛い痛いと呻いていた。

 「自業自得だろ?お前が飲まなきゃそんなことには
  ならなかったんだから」
 「だってー、美味そうだったんだもん」

 実際美味かったし?

 「お前なぁ…」

 思わずため息。だもんじゃないだろだもんじゃ。

 「…ま、いいか」

 いい加減突っ込むことにも疲れたらしい。
 今は、目の前で湯の中を泳いでいる麺に集中しよう。
 麺というのはただ茹でるだけでは駄目なのだ。
 時々箸を加えてやらないと、麺どうしがくっついてしまうのである。
 
 「スラカ、こっちはもういいみたい」
 「あ、んじゃぁ火止めて?こっちももうすぐできるから」
 「了解っと。さて、取り出しますかね」

  蒸し器の中からできたそれを取り出し、満足そうに微笑んだ。
 出来は上々のようだ。隣では、スラカが碗に盛ったソバに暖かい
 つゆをそそいでいる。

 「ねぎとかまぼこは?」
 「ほい、これな」
 「さんきゅ」

 年越しソバは完成。そえつけの物も完成。後は運ぶだけ。
 
 「あの」

 キッチンとリビングの境目。そこから顔を覗かせているのは
 ニモカの客人、ペックだった。

 「あれー?どしたの?」
 「何か手伝うことないかなぁって思って」
 「手伝いねぇ…ないよーって言ってあげたいんだけど…」

 首を傾げるペック。それを目の端に止め、背後にいるスラカを
 見やる。スラカは年越しソバが乗っているボンを持ってくると
 運んでくれると助かるな、と言ってペックに盆を渡した。
 ペックは笑ってそれを受け取る。リビングに向かうペックに続いて
 宗秦も追加の刺身を持っていった。

 「ソバ持ってきましたー」
 「おー、きたきた」
 「刺身の追加もおまちどうさんっ!」
 「うわ、まだあったのか」
 「そりゃ、1匹分ありますもの」

 ハイスが顔を上げる。

 「オレが持ってきたやつは?」
 「それは明日の分ね」

 キッチンから盆を持ったスラカが現れた。
 盆の上には小さな容器。

 「それ、もしかして茶碗蒸し?」

 恐る恐るといった感じで尋ねる美月姫に、スラカは笑って
 頷いた。

 「せいかーい。で、姫タンにはこれね。銀杏だめでしょ?」
 「わぁ、ありがと〜。スラカたん」
 「全員いった?んじゃ、始めるよー」

 
 除夜の鐘が聞こえる中、深夜の宴が始まる。
 年の終わりと初めにまたがる賑やかな宴。
 また来年もできるといいね、そう思いながら。

 よいお年を。そして、明けましておめでとう。
 みんなに、心をこめて。

                    Fin...
 

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